仕りました、今日、現品を御持参と存じましたけれども、慎重の上にも慎重と存じまして、お見本だけ、これへ持参仕りました」
「では、これへ出して見せ給え」
「はい――」
 また後ろを顧みて膝行頓首をして、次の間に置据えた風呂敷を抱えて、また膝行頓首して、これを恭《うやうや》しく岩倉三位の前にさし置き、恐る恐る、結び目を解きにかかりました。
 岩倉も、大久保も、品川も、共にその風呂敷の中を無言で見入っている。
 風呂敷を解くと、中から出たものは、さのみ意外なものではありません。ただ、眼もきらびやかな大和錦《やまとにしき》、それから紅白の緞子《どんす》。一巻ずつそれを御丁寧に取揃《とりそろ》えて、いよいよ恭しく三位の前に推《お》し進めると、三位は座右から、あらかじめ備えられた一つの彩色図を出して、大久保に示し、
「玉松《たままつ》が作ってくれたこれが図面じゃ、よく引合わせ御覧になるがよろしい、寸法、式、模様、色合、誤りがあらば申し附けて訂正させるように」
 そこで、大久保は大和錦を取り上げて、二三尺ずつ引きほごしては、下なる彩色の図面と見比べる。そこへ品川弥二郎が首を突き出して、大久保の調べのあ
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