に属すべきものを、不思議な男の手に発見したものですから、当然の要求のつもりで掛合ったのが原因でありましょう。ですから、献上隊の一行が暴行を働いたというわけではなく、かえって、事情を呑込まぬ米友の頑強が、非に落つる嫌いもあるにはあったのであります。しかしまた、献上隊の方でも、もう少し事を穏かに掛合って、少なくとも米友を首肯せしむるだけの理解を尽さなかったという落度《おちど》もあるにはあるでしょう。だが、こうなってみると、どちらも市が栄えたというもので、彼等は僅少の犠牲で原価を取戻し、こちらは少々の手わざ足芸でうまく要領を外したという取柄があるのであります。しかし献上隊の奴等は、今のあの小冠者のタンカがおかしかったり、その手練に舌を捲いたり、その口小言が絶えないのでありますが、なんにしても、銭を拾い集めるのが一仕事です。たとえ一枚でも天下の通宝を土に委《い》してはならないという護惜《ごしゃく》も手つだって、草の根をわけ、石の塊りを起して、収拾にかかっているところへ、戞々《かつかつ》と馬の蹄《ひづめ》の音をひびかせてこの場へ通りかかったものがあります。
前のは、年の頃三十七八歳の威風ある偉
前へ
次へ
全386ページ中262ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング