五十
駒井甚三郎は、まず、初発音に於て、この異人氏が英語は話すけれども英人でないことを知り、話してみると、この土地に孤島生活をしているけれども漂流人ではないということも知りました。誰も予想する如く、船が難破したために、この島へ漂いついて、心ならずも原始生活に慣らされている、早く言えば、ロビンソン漂流記の二の舞、三の舞である、とは一見、誰もそのように信ずるところだが、少し話してみると、やむことを得ざる漂流者ではなくて、自ら好んで単身この島へ渡って来て、また好んでこういう原始生活を営んでいる生活者であるということを、駒井甚三郎が知りました。
これが駒井にとって、一つの興味でもあり、好奇心を刺戟すると共に、研究心をも刺戟して、これに会話の興を求めると共に、この異風の生活の白人を研究してみなければ置かぬ気持にもさせたのです。今日の開明生活を抛《なげう》って、何しに斯様《かよう》な野蛮生活に復帰したがっているか、それも、やむを得ずしてしかせしめられているなら格別、好んでこういう生活に入り、しかも、一時の好奇ではなく、もはや、あの小舟が朽ち果てる以前から来ており、今後、この島にこの生活
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