来ることを怖れようともしていないのが、少し勝手がおかしいとは思いながらも、危険性は少しも予想されないから、そのまま近づいて見ると、先方は鬚《ひげ》だらけの面をこっちに向けて、じっと見つめていることは確かだが、さて、なんらの敵意もなければ、害心も認められない。
 いよいよ近づいて見ると、原始に近い姿をしているが、その実、甚《はなは》だ開けた国の漂流者と見える。駒井がまず、英語を以て挨拶を試みてみました、
「お早う」
 先方がまた同じような返事、
「お早う」
 駒井の英語が、本土の英語でないように、先方の発音もまた借りの発音らしいから、英語を操るには操るが、英語の国民ではないという認識が直ちに駒井の胸にありました。
 けれども、英語を話す以上は、その国籍はともあれ、時代に於ては開明の人であり、或いは開明の空気に触れたことのある人でないということはありません。英国は海賊国なりとの外定義はあるにしても、その個人としては、直接に人を取って食う土人でないことは確定と思うから、ここで三個の人間が落合って、平和な挨拶を交し、これからが駒井とこの異人氏との極めて平和なる問答になるのです。

      
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