逆賊の取扱いを受けなければならないように、現在の住ましめられている地点を軽蔑しては、所払いの刑罰を受くることを覚悟しなければならぬ。いかに暴ならんがために暴を趣味とする女王といえども、現在の立脚点をだけは軽蔑し得られないという約束に縛られて、しかして山科という輪郭に暫し追従を試みているかというに、必ずしもそうではないのです。
 山科の地形が、甲州に似ている。山河襟帯《さんがきんたい》の中間に盆地を成すの形勢が、何となしに甲州一国を髣髴《ほうふつ》させるのが山科の風景である。山科を大きくして、その盆のくりがたをさらに深くしたのが即ち甲州であるとは言えるかも知れないが、すでに故郷の地形にあこがれを持たないこの女性が、改めてその雛形を珍なりとすべき理由はない。
「山科」という地が、おのずから一天地を成している。その整ったただずまいが、この女王のお気に召したらしい。山科十六郷はよく整った一国の形成を成している。京都の郊外の山科ではなく、京都に附属した山科でもなく、たとえ小規模ながらも、一天地を成しているところに山科の妙味がある。山科は小さき甲斐の国というよりも、小京都といった方が当るかも知れな
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