い。山河の形成が、僅かに十六郷を含めたなりで独立している。そうして、その独立が、お銀様の住むのにちょうど手頃である。胆吹は気象が少々荒びていた、ここの空気は淘《よな》げられている。できるならばこの山科全部をソックリ買いたい、これをソックリ買取って我が屋敷として住みたいと望み得るほど、この地形全体が少なくともこの女王にとって、手頃の地形を成していたからです。
 胆吹の女王となるよりも、山科の地主でありたい、そんなような愛着を、お銀様が山科そのものの地相に持ち得られたということが、即ち山科を軽蔑し易《やす》からずとする所以なのでありましょう。

         四十七

 胆吹の女王が、今や、山科の地主にまで脱皮しつつあるということを突きとめたのは、宇津木兵馬として、骨の折れることではありませんでした。
 自然、宇津木兵馬は、長浜から、この山科まで道を急ぎました。近江から山城は地つづき、山城の内にあって、山城以外に立つというべき山科は、近江の国からの取っつきであります。長浜から直行にして十余里の道、この間に、なんらの瘴煙蛮地《しょうえんばんち》はありません。
 兵馬が山科に来て、まず草鞋
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