の卒都婆を拾い上げました。
見事な筆蹟である上に、これはまさしく女の手筆《しゅひつ》だと見ないわけにはゆきません。しかも、その女の手筆というものが、たしかにどこぞで見たことのある筆蹟のように思われてならないのですが、その筆先しらべはあとのこと、「無明道人俗名机竜之助」の文字が兵馬の腹にグザと突込みました。
誰がこういうことをした、眼のあやまちではないかと、篤《とく》と見直したけれども、そのほかのなんらの文字でもない。
兵馬は、これを取り上げると、もう一つ、それと上になり下になって漂うていたもう一つの同形のものを取り上げて読むと、
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「淡雪信女亡霊供養」
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と、同じ手筆で、同じ筆格に認《したた》められてある。
この二つが供養塔の下に並んで、波に戯れているのは、謎とは思われない。何人か心あってしたこと、心なくてはできない手向《たむ》け草《ぐさ》、念が入り過ぎている。ことに人力ではなく、運命の悪戯《いたずら》というものがからまって、この波が今も二つをなぶるように、二つの魂がなぶられている。それをまた後の、いたずらの心から、さる人によって、
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