この供養が営まれた。いずれをいずれにしても、倒逆の葛藤《かっとう》を免るることはできません。
 だが、ここにこれがある以上――もはや、戯れの底も見えた、と兵馬は小躍《こおど》りしつつ、汀《みぎわ》の砂地を踏み締めて、人やあるとあたりを見渡すと、漁師の老人が一人、櫂《かい》を手にして、とぼとぼと歩んで来る、それをこの柱の下で待受けて問を発しました。
「その供養塔は誰が立てたのですか、何のために、何という人がこれを、いつの日ころにたてたものですかね」
「はい、それはなあ、ついこの間で、こちらから舟を乗り出して、この湖の真中のどこかで、情死《しんじゅう》を遂げた男と女がござりましてな、男の方は三十幾つかの年配、女子《おなご》の方はまだ十七八でござんしょうかな、月夜の晩に、お月見だといって、浜屋の裏堀から舟を乗り出しましてな、この湖の中で、どんぶりと情死を遂げてしまいましたとかでござんす、舟だけが浮び流れ流れて、こっちの岸につきましたが、中には主がござりませぬ、遺書《かきおき》のようなものもござりませなんだ。舟が漂いついたので、こっちではじめて騒ぎまして、いろいろたずねてみましたが、さっぱり当
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