《むほん》を企てる、もうこの上は長追いは無益である、あのやくざがこの界隈に出没しているということを基調として調べてみれば、存外、獲物があるかもしれない、そう思ったものですから、兵馬は臨湖の岸まで来て、急がず、湖上遥かに見渡して、その風景に見恍《みと》れて彳《たたず》んだが、それからおもむろに湖畔を逍遥の体で歩んで行くと、ふと岸の一角に、まだ新しい木柱の一つ立つのを認めました。
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「為有縁無縁衆生施餓鬼供養塔」
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 墨色もまだあざやかに、立てたのは昨日今日の特志家の善業であること申すまでもありません。
 その大きな供養塔の木柱が立っている、その下の、波の寄せては返す岸辺を見ると、そこに雛卒都婆《ひなそとば》が流れている、その卒都婆もまだ新しい。波になぶられて、行きもならず、戻りもならずに漂うている、その墨の文字さえが、供養塔の文字とほぼ同時同筆を以て書かれたように、あざやかに読めるものですから、兵馬がそれを見やると、
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「無明道人俗名机竜之助帰元」
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と書いてあるので、蛇を踏んだようにハネ返ってそ
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