、ああいった走り道具を持ったものはないということでありました。
果して、あいつが、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百である限り、あいつの通過するところに、草の生えたためしがない。転んでもただでは起きて行かない奴である。本街道を外れて、わざわざ長浜の町を突切るくらいだから、何かこの土地にからまるべき因縁があるに相違ないと感づいたのです。
そこで、逸早《いちはや》く彼を取っつかまえて、泥を吐かせようと、かけ出してみたのですが、足に物を言わせることにかけては、こいつに敵《かな》いっこはない。見る間に、その後ろ影を町並の角に見失ってしまいました。兵馬は歯がみをしたけれど追っ附きません。空しくその走りくらましたあとについて急いでみると、琵琶の湖畔に出てしまいました。いわゆる臨湖の渡しであります。そこまで来た上は、この先はもう、湖であります。左へそれたか、右へ走ったか、そのことはわからないが、あいつの目ざすところが、北でも、東でもなく、西に向っていることに於て、当然、彦根、大津、京都の本街道を飛んで行くものに相違ないと思いました。
そうでなければ、この地にとどまって、何か、あいつ相当の謀叛
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