は浮気もすっかり納めて、いちずにこの若主人を守り通そうという心が、昨夜あたりからこっそり水も漏《もら》さない仕組みになりきってしまっているのです。
そこで神尾主膳主従は、京都行きの腹を固めて、今までにない新しい勇気に酔わされて、心地よい一夜を明かしたというものです。
翌日になると、そのお受けのためにと言って、神尾が悠々として出かけました。
お絹は、身だしなみをする、取片附けをする、それが直ちに出立の身ごしらえ、荷ごしらえにもなるので、お嫁入でもするような若々しい気分に浮かされて、障子にはゆる[#「はゆる」に傍点]小春日和、庭にかおる木犀《もくせい》の花の香までが、この思いがけない鹿島立ちを、やいのやいのとことほぐかのようににおいます。
四十二
宇津木兵馬は北国街道を下って、越前と近江の境を越えるまでは何事もなかったけれども、長浜へ来ると、ふと、路傍で思いがけないものを見つけました。
それは、長浜の市中を横に走るところの、素敵に足の早い旅人を、遠目に見かけると、それが、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百という見知越しのやくざでない限り、ああいう気取り方と
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