いた、その寺があいているから、そこへ入って坊主になれというのではない、閑居の体《てい》にしていて、気が向いたら、京都なり、大阪なり、好きなところへ泳ぎ出して、好きなように遊んでよろしい、出仕の場所の指図は受けないし、時間というのも制限がない、およそ、この神尾の勤め口としては絶好だろう、今もちょっと口に出たが、板倉周防の仕事をしろというのではない、柳生但馬とか、石川丈山とか――あれの仕事を当世で行くんだ。石川丈山と言えば、お前は名を聞いていないかも知れないが、戦場の行賞の不平をたねに、知行を抛《なげう》って京都の詩仙堂というのへ隠れたのは表面の口実、実は徳川のために、京都の隠目附《かくしめつけ》をつとめていたのだ。おれは但馬守ほどに剣術は使えないし、丈山ほどに漢詩をひねくる力はないが、遊ぶ方にかけちゃあ、ドコへ行ってもヒケは取るまい、近頃は、遊ぶに軍費というやつが涸渇《こかつ》しているから、遊びらしい遊びは出来ないが、今度のはれっきとした兵糧方がついている、なんと面白かりそうではないか――行って落着く住居までが、もう出来ているのだ、身一つではない、身二つを持って行きさえすれば、ここの生活
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