打明け話をして言うことには――
 今度の京都行きの話は、どこから出たかその出所はわからない。またわかっても、それは誰にも言えないが、だいたいに於て、こういうことになっている――
 相当の体面を保つだけの手当は、それはもとより充分に出る、その上に交際費はつかい放題とは言わないが、機密によってはかなり潤沢に許される、誰が今時、何のためにそんな無用な金を出して、無用な人を遊ばせるかと言えば、遊んでいながら、京都の内外の様子をすっかり偵察して、それを時に応じて、こっちへ知らせる役目だ、表面の辞令をいただかないお目附《めつけ》だ、悪く言えば間諜《かんちょう》、ペロで言えばスパイというやつかも知れないが、決して下等な仕事じゃない、柳生但馬もやれば、石川丈山もやった仕事なんだ、徳川家のために、公卿と西国の大名どもの監視をしていようというのだ、その役廻りにこの神尾を見立てたのは、誰とは言えないが、見立てた奴も、見立てられた奴も、まず相当なもんだろう、そこで、話はいよいよ早い、なんでも京都の北の方に鷹ヶ峰というところがある、そこに「光悦寺」という小さな山寺があって、その昔、本阿弥光悦という物ずきが住んで
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