ねてみたが、見事な門前払い、なるほど、今の神尾ではかくもあらんかと腹も立たなかった、今日という日は、妙に虫の居所が辛抱強い、それにも屈せずして御門を叩いてみると、ここの御門前は極めてすべりがよろしい、かくばかり滑《なめ》らかに通されて、温かいお言葉に接することは、神尾の身にとって、近ごろ絶えて無いこと、よろこばしう存ずる。ただし、好意に甘えて、御多用の時間を長くおさまたげすべきではないから、手っとり早く申し述べたいが、いったい、今の徳川の天下は、どうなっているのでござる、これから先々、どうなるというのでござる、それを、一言、お洩《もら》しが願いたいのじゃ」
 神尾としては、今日はまた舌も存外滑らかで、情理明晰《じょうりめいせき》にすらすらと述べました。
「何かと思えば、改まった御質問、さもありなん御心底もお察し申すが、なにしろ、そのことは重にして大、なかなかここで寸秒の座談に尽すというわけには参らぬ、拙者も門跡へ出仕の身でござるによって、ただいま打寛《うちくつろ》いで物語りを致す時間を持ち合わさぬ故に――それではこう致そう、貴殿の、その発心を、拙者はここで冷ますことを致したくない、よっ
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