て、明晩と言わず、今晩、いささか二三子の会合もあるによって、苦しからずばその席へ、貴殿の再出馬を願いたいものだが、いかがでござるな」
「よろしい、承知仕った、すでに会うまじき昔の人に、会わんとして会うた以上は、尽すところを果さなけりゃならぬ、今晩なりと、明日なりと、貴殿のお引廻しにあずかりたい」
「いさぎよいお言葉、では、今夕七ツをお約束仕ろう、再度、これまで御足労を煩わしたい――参集の二三子とても、いずれも心置きなきものばかりでござる」
 鈴木安芸守の砕けた応対、ちっとも我を侮らぬ扱いがいよいよ頼もしい。それというのは、この人も幕府の一人には相違ないが、城下にいること少なくて、山に住むことが多いものだから、世間のことにうとく、従って、昔の神尾あるを知って、その後の神尾を知らない。さしも持崩して千瘡万穴の、この神尾の醜骸を、まだ取りどころのあるものとして、手を触れてみてくれるだけでも頼もしいと、神尾が一応、不覚の涙を催したというのも無理はないでしょう。

         三十五

 その夜、再び鈴木安芸守をたずねると、鈴木は、客間に杯盤を設けて、打ちくつろいで神尾を迎えたが、その座上
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