分としての割当ての縄張を見て置くだけといったようなものです。
見るに、気のせいか、マドロスも、ウスノロぶりがだいぶ引きしまってきたようです。兵部の娘の何となく甲斐甲斐しく見え出したのと同じ見えですが、見損いでない限り、二人の気分の改まりは、環境のもたらす一つの好感化かも知れません。というのは、今や他の船員はことごとく陸上に安定の地を求めて一生懸命です。が、この二人だけは船に置かれて、これまた、船を安定の地として残されている。周囲の嫉妬もないし、憎悪《ぞうお》も遠のいたし、そこで心の僻《ひが》みが取れたせいもありましょう。それともう一つは、この一組の仲は、あらゆる船員の憎悪の的でありましたが、七兵衛だけは異った同情を持っていたのです。マドロスが検束なきふしだらで、この娘一人を独占し、女も女で、人もあろうに、あの眼の碧《あお》いウスノロのどこがいいのだと、さげすまない者は無いが、さて、これほど侮られ、にくまれながら、この二人の存在を如何ともすることができない所以《ゆえん》は、船の舵《かじ》をこの男が握っているからで、この男無き限り、他の船員に、まだ知らぬ大洋を安全に行き得る自信がない。他
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