人島だ、環境の事情からも、自衛の本能からもだな、前後左右に敏感に神経が働くからな、注意すまいと思うても、物影の有る方に注意は向くよ、植物と人間とを見誤るほどに、わしは酔うてはいないのだ」
 その返答を聞いて、なるほど、夢のように、そぞろ歩きをしながらも、人をあずかる身になると、油断というものはあり得ない、という心のたしなみをお松がさとりました。男子は外へ出れば七人の敵がある、という諺《ことわざ》なども思い当るし、何の苦もなかりげに見える人に、かえって断えざるの苦があるというような同情を思い出でました。
「あまり夜露に打たれてはお毒でございましょうから、お館《やかた》へお帰りあそばせ、あの人たちは、あのまま、あの人たちにお任せになった方が功徳にもなるでございましょうから、このままお帰りあそばしてはいかがでござります、わたくしがお供を致します」
とお松が言い出でたのを、駒井は素直に受入れました。
「なるほど、それもそうですね、夜露が毒とも思わんけれども、帰って、仕残しの仕事もある、そなたの言う通り、だまってこのまま引上げた方が、多数の興をさまたげないで済むというものだ。では、一緒に帰るとし
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