魔ヶ池」と記された立札を見て、その名を異様に感じてその傍《かた》えを見ると、ここへ秀吉が床几《しょうぎ》を据えて軍勢を指揮したところだと立札に書いてあって、その次に一詩が楽書《らくがき》してある。
[#ここから2字下げ]
猿郎出世是天魔(猿郎世に出づ是れ天魔)
一代雄風冠大倭(一代の雄風、大倭に冠たり)
可惜柴亡豊亦滅(惜しむべし柴亡び豊また滅びぬ)
荒池水涸緑莎多(荒池、水|涸《か》れて緑莎のみ多し)
[#地から2字上げ]清人 王治本
[#ここで字下げ終わり]
これを作ったのは支那人だな、詩はあんまり上手とも思われないが、支那人らしい詠み方だ――
と思うと、その昔、秀吉がこの北の庄の城を攻め落し、柴田勝家が天主へ火をかけて一族自殺し終った、それを秀吉が高台から見下ろして豪快がったという悲壮な物語は太閤記で読んだが、なるほど、地理を目《ま》のあたり見ると、この地点がまさにそれだ。ここだというと、先刻見て来た北の庄の城あとが眼下に見える。この裏山をすでに占領されて、ここから敵に見下ろされるようになってはおしまいである。
天主に火のあがるをながめて、秀吉が、もうそれでよし、勝家の亡
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