大菩薩峠
山科の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蝉丸神社《せみまるじんじゃ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)外|寂《じゃく》ニ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]共
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         一

 過ぐる夜のこと、机竜之助が、透き通るような姿をして現われて来た逢坂の関の清水の蝉丸神社《せみまるじんじゃ》の鳥居から、今晩、またしても夢のように現われて来た物影があります。先晩は一人でしたが、今夜は、どうやら二人らしい。
 その二人、どちらも小粒の姿で、ことによると子供かも知れない。石の階段をしとしとと下りて、鳥居のわきから、からまるようにして海道筋へ姿を見せた二人は、案の如く子供でした。いや、子供ではないけれど、ちょっと見た目には、子供と受取られてもどうも仕方がない。青年にしても、成人にしても、世間並みよりはグッと物が小さいのですが、事実上、子供でないこと
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