る。兵馬の頭には、僅か昔の京洛の天地、壬生《みぶ》や島原の明るい天地の思い出が、怪しくかがやいて現われて、あれから新撰組はどうなったか、近藤隊長、土方副長らのその後の消息も知りたい。今の京都の天地にはところによっては腥風血雨《せいふうけつう》であるが、まだまだ千年の京都の本色は動かない。
 兵馬は、福井のことは頭に上らず、しきりに、京へ、京へと心が飛んで参りました。

         五十四

 福井の宿についたその翌日午後、福松は欣々《いそいそ》として宿に帰って来ました。
 その時に、宇津木兵馬は旅日記を認《したた》めておりましたのですが、そこへ、欣々として帰って来た福松が、にじり寄って、
「ねえ、宇津木さん、ほんとに都合よく事が運びましてよ、わたしの昔|御贔屓《ごひいき》になった親分さんが、この土地に来ておりましてね、その方のおっしゃるには、福松、よいところへ来た、今この土地は大繁昌で、腕のある芸者のないのに困っているところだ、お前、よいところへ来てくれた、いい看板の明きもあるし、立派な家も持たせてやるからここへ落着きなさい、どんなことがあっても当分はここを放さないよ、とおっしゃ
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