なり、問われても、責められても、一言一句も吐かない。拷問《ごうもん》同様の目に逢わせてみても、口がいよいよ固くなるばかりだ。のみならず、大抵の責め道具では、あいつには利かない。人間の生身だから痛いには痛い、こたえるにはこたえるだろうけれども、あいつに限って、痛いと言わないのみか、痛そうな面をしない。痛そうな面をしないのではない、本心痛くないのだ。すなわち不死身という変体になっている、そう思うよりほかはなかった。それから、あぐみ果てて、好意を以て、だましつ賺《すか》しつしてみても、いったん固めた口はついに開かない。わざと鎌をかけて、口を開かないと非常な不利益な立場になる、損だぞ、と言っても、損益が眼中にない。
ついに政略上、是非善悪不明のままに、あいつを農奴の張本に仕立てて、曝《さら》しにかけたのは、こいつならば、よし冤罪《えんざい》に殺しても、後腹《あとばら》の病まない無籍者だから、時にとっての人柱もやむを得ないと、当人ではない、役人たちが観念して、草津の辻へ「生曝《いきざら》し」にかけてしまったが、源松そのものも、実はあんまりいい気持がしなかったのだ。無籍者にしろ、放浪者にしろ、ル
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