ぬ危険性を帯びていることは、この二人も知らぬはずはあるまい。まして深夜のことです。今も深夜ですから、この歩調で歩いて行っても僅か三里足らず、京洛の天地は、やはり深夜の眠りから覚めてはいないはず。そうでなくても、海道筋の夜の旅はきつい。打見たところでは、有力な公武合体の保証があるというわけでなし、奇兵隊、新撰組の後ろだてがついているというわけでもないが、こういう人柄に限り、後ろから、オーイオーイと呼びかけて決闘を挑《いど》むという物すごいのも現われず、酒手《さかて》をねだる雲助霞助もてんから目の中へ入れては置かないから、不安なるが如くして、かえって安全なる旅路。
「弁信さん、イヤに明るい晩だなア、お月夜でもなし、お星様もねえのに、イヤに天地が明るいよう」
と後ろなるが呼びかけたのは、宇治山田の米友でありました。
「はい」
と、それを直ぐに受答えたのは、紛《まご》う方《かた》なき弁信法師でありました。
さては、御両人であったよな。グロの友公と、お喋《しゃべ》り坊主の弁信とが、真面目くさって連れ立って歩いているのでした。そんなら、そうと、最初から言えばいいのに。
驚いてはいけない。二人と
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