けに、三杯、四杯と呷ると、その一杯毎に、無性に気分が面白くなる。珍しく浮かれて、立って、踊って、舞おうとの気分にまでなりました。
 その時、よよとして人の泣く音《ね》。

         四十三

 ああ、はじまったな、よよと啜《すす》り泣き、わあ! と咽《むせ》び泣き、ふたり相擁して泣く男女の二部合奏。
 出端《でばな》に聞いた合方《あいかた》がまた聞けるわい。陶然として酔うた竜之助は、それを興あることに聞きなして、その声のする方を注視していると、なるほど、真暗い中から、まぼろしが出て来た。
「出たな!」
 そうして、うっすらと、弘仁ぶりの柱と長押が、十字架のように現われると見ると、ひらひらと蝶の舞うように、細いきゃしゃな手が、宙に浮いて来て、その柱を下の方から撫《な》で上げる、と見る間に、柱は暗に吸いこまれるように消え失せて、白いしなやかな手首だけが、暗の空中に舞っている。それが、ひらひらとある程度まで上へ舞い上っては、また、右左の柱の方を、撫でさぐると、やがてまた、よよと泣く音、わあ! と絶望の泣落し、それが相ついで、何とも言えない悲哀の響きを伝えるが、竜之助は、この声ある毎に
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