カンカンと熾《おこ》っているが、人のいないことは出て行った時と同じで、行燈《あんどん》はあるが、明りのないことも前と同じ。そこへ、さあと坐り込んで、ホッと息をついて、獅噛火鉢へ肱《ひじ》をあてがってみたが、落着いてみると、四方《あたり》の森閑たることが、ひとしお身に染みて、さて、どうして急に自分の心頭がわいて、一気にここへ走《は》せ戻ったかが、気恥かしいくらい。
 火鉢にかかった鉄瓶を取って、湯呑についでグッと一口に飲んでみると、湯と思ったのが酒であった。あ! と思ったが、この場合、悪いものを呑まされたのではない。一杯、二杯、グッ、グッと呷《あお》ってみると、急に自分の心持が賑《にぎ》やかになって、四方がなんだか面白くなってきました。
 面白くなってきてみると、はて、なんで自分が急に思い立って、ここまで走せ戻って来たか、これもおかしい。
 ははあ、斎藤はいいものを置いて行ってくれたわい、この鉄瓶が酒であろうとは思わなかった、燗《かん》が口合いに出来ている。鉄瓶から直接《じか》にうつした燗だから、金気《かなけ》があって飲まれないかと思うと、そうでない――上燗だ。
 竜之助は湯呑で立てつづ
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