あって、それが門番の美しい娘と出来合ってしまった。二人は上りつめて、切羽《せっぱ》つまった末に、とうとう駈落《かけおち》と覚悟をきめて、ある夜、しめし合わせ、手に手をとって駈落を決行したが、その時、若い美僧は、重々悪いこととは知りながら、師の坊の手許《てもと》から若干金を盗み出し、それを後生大事に財布に入れて肌身につけたのは、世間を知らない二人が、われから世間の荒波に乗り出すからは、何を置いても通用金のこと、これさえあれば当座の活路、というだけの分別はあって、何をするにも先立つは金、という観念から、それを恋の次のいのちとして後生大事に持って逃げ出した、額《たか》は、百両とか、二百両とか、相当の大金であったとのこと。
どういう縁故であるか知らないが、この月心院まで落ちて来て、ここへ一晩かくまわれ、いよいよ明日は奈良へ向けて落ちのびの、その夜のことでありました。美僧美女は、ここの一室に一夜を明かし、その時に僧は、肌身放さぬ大金の財布を柱の上の釘にかけて、そうして一夜を女と明かしたものです。
さて、その朝まだき、人目を厭《いと》うて、木萱《きかや》に心を置いて、この庫裡を忍んで立ち出でた
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