、マドロスと兵部の娘を引据えて置いて、また改めて、柳田平治に向って次の如く言いました、
「柳田君、では、このまま囚人《めしうど》を君に頼みますぞ、これからいったん追波《おっぱ》の本流へ出て、鹿又《ししまた》から北上の本流を石巻まで舟でやってくれ給え、舟は本流へ出るまでは、今のあれでよろしい、それからは、最前仕立てて置いたあれで石巻までやってくれ給え、この辺はすでに仙台領だから、あの舟で行きさえすれば旅券がなくても大丈夫だ。なお、念のために仙台藩の通券を一枚君に貸して上げる、これを持って舟で下ってくれ給え――絵図面をあげる、この絵図面によって下れば更に間違いなし」
と言いかけた時に、今まで哀号をしていたマドロスが、また急に変な声を出して、
「田山先生、ワタシノ命、助ケテ下サイ、ワタシ、オトナシク月ノ浦マデ、舟漕グデス、ワタクシノ命、アチラデ助ケテ下サイ、コレカラ舟漕イデ上ゲルデス」
と言いました。その心細い声を聞くと、田山白雲がふき出して、
「なるほど、舟のことはこいつが本職だった、本職の手を縛って置いて、柳田君に廻航の心配をさせるのも愚かな話だった、こいつを一番利用して、ここまでやって
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