にも読み得らるるようにしてあったものを、特に持卸して背負い出したというのがわからない。こんなものを盗んだって仕方がねえじゃねえか。また多くの人に見られるためなら、わざわざこんな行燈背負いのように背負わせて歩かせずとも、あのままにして高く揚げて置いた方が、効果が多い。
こうして見ると、高札が人間を押しつぶしている。通りかかったところへ、ももんがあ[#「ももんがあ」に傍点]かなんぞのように不意に高札が飛びかかって来て、押伏せたものだから、人間が面喰って、押伏せられたなりで窒息している――とも受取れる。
なんにしても米友は、ただ単に、これを判じ物の観念をもって驚いているのではない。人間一人がここに斬られて死んでいるという現実の非常時に当面し、悲憤も、驚惑も、しているのですが、それにしても、こうなってみて、またいささか、手ごたえの変なところがないではない。第一、人が斬られている、殺されている! という先入観念からが、なんとなく拍子抜けになってきて、斬られているというが、血が流れていやしねえではないか。ことによると、こいつは行倒れだ、行燈背負いの日傭取りの貧乏人が、栄養不良のために、ついに路
前へ
次へ
全551ページ中541ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング