のです――内に燃ゆる義憤があって、その義憤が適当なはけ場を見出し得られないためしの多い米友は、常に地団駄を踏んで、わが力の足らざることを、大地に向って強訴弾劾《ごうそだんがい》するのならわしを持っている。
今やまた、せっかくの心づくしが水の泡《あわ》となって目前に現出している。よって、米友が歯噛みをして大地を踏み鳴らしている地点というものが、ちょうど、これが湖畔の町に於ても目抜きの巷《ちまた》でありました。
一方に、当地第一等の富豪、下津伝平の屋敷の堀が広々とめぐらされている。その向うにはかなり広大な絹取引の会所の棟《むね》が横たわっている。大商店が倉を並べている。大きな旅籠《はたご》の中に、最もすぐれた浜屋というのが、塗りごめの戸袋壁に、夜目にもしるきほどの屋号を黒い塗壁に白く抜いている。この浜屋――というのが、以前から問題の、この中に覆面の怪物が二個いて、その間へ頬かむりのやくざ者がはさまった、前の晩の出来事の、その陣屋まがいの、だだっ広い構えなのであります。
ここまで来て、眼前に横たわっているのが人間の死骸であることを、夜目にも紛れなく認めた瞬間に、かくばかり激憤した米友も
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