ただ、道庵の脱線ぶりのあまりにあざやかなのにでくわすと、青嵐も時々面食うこともあるが、それとても、宿酔のさせる業で、この人本来の調子ではない、どうしてなかなか侮り難い経験も、学識も備えている――と道庵を買いかぶりました。事実また、道庵の方にも、多少は買いかぶられるだけの素質があったかも知れないのです。ことに、その話しっぷりや、気合というものが、この辺の人士とは全く調子を異にし、口に毒があるけれども、腹にわだかまりがない。これやこの江戸ッ子というものの如是相《にょぜそう》であろうかと、青嵐はようやく傾倒する気にまで進んで行ったものと見えて、
「さきほどおたずねの、その、例の豊公の木像と、淀君の消息と、秀頼八歳の時の筆――といったようなものは、実は確かに当寺に保管してあるのです、拙者が留守をあずかって、よく保管してあるのです。それに相違ないが、世間にあまり披露されたくない、というのは変なもので、この土地はそれ、豊太閤が羽柴筑前守時代の発祥地でしょう、秀吉が居城を築いて、ようやく大を成したゆかりの土地ではあり、それに、例の徳川家にとっては無二の反逆人、石田治部少輔三成の故郷に近いことで
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