斐もなく、それに職業の手前、医者の不養生を如実にお目にかけて、何ともはや汗顔至極……」
と頻《しき》りに詫《わ》びるけれども、その表情を見るとけろりとしたもので、面《かお》のどこを見ても汗などをかいている痕跡はない。
「時に、少々、物を承りたい儀でござるが、この辺に知善院と申すお寺がござりましょうか、御存じならば御案内にあずかりたい」
「知善院――それは当寺でござるが」
「ははあ、では、御当寺がその宝生山知善院と申されるお寺様でござりましたかな」
「左様、当寺がたしかに知善院に相違ござらぬが」
 二人の問答がここへ来ました。これによって見ると、道庵先生は戸惑いをして、このところへのたり着いたのではなく、たしかに、山号までも心得て、この寺を目的にやって来たもので、
「それは、それは」
 改めて手を顔にして恐悦がり、
「御住職は御在寺でござりましょうかな」
「住職――ただ今、ちょっと無住――というわけではないが、その留守をかく申す拙者があずかっておりますが……」
「左様でござるか、それはまた何よりお手近い儀でござる、実は、愚老は、江戸から参上いたしたものでござるが」
「ははあ、江戸から遥々
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