な物音といっても、神経を衝動させるような物音ではないが、思いがけない物音には相違ない、玄関のところで、かなり高らかな鼾《いびき》の音がするのです。誰かここへ来て寝込んでいる。近づいてのぞき込んで見ると、見慣れない一人の老人が、いい気持になって、玄関の式台に寝込んでいる。その人品風采を篤《とく》と見定めて、
「お医者さんだな」
 本来、お医者さんだの、坊さんだのというものの姿は、そんなに人を気味悪がらせるものでないが、さて、この辺にはあまり見かけないお医者さんだが、何の用で、こんなところへさまよい込んだのか、この近所の病家先へでも来て戸惑いをしたのか、それとも、途中、医者の不養生で急病を起し、医者を救うべき医者がないために、ひとり苦しんでいるのかと思えばその鼾は至極泰平であって、苦痛だの、屈託の色なんぞも見えないし、いささか――ではない、かなり多分の酒気を帯びているところを見ると、これはてっきり病家先で、全快祝いかなにかに呼ばれて、いい心持に食《くら》い酔って、戸惑いをして、ここへ転げ込んで寝込んでしまったものだ、天下は泰平だわい、と青嵐も感心はしたが、このままでさし置くわけにはゆかない
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