る」
「どうして、わかる」
「そりゃわかるよ、言語挙動で、この土地に居ついている人か、新来の人か、誰だってわかる」
「ふむ――」
 ここにもまた勘のいい奴が一人いる!
 この浪人とは、数日前、ここの岸で釣をしているところを、偶然立ち話をしたばっかりなのに、自分がいま胆吹王国にいることを先刻承知でいるらしい。それのみか、ああいったような事情やむを得ず、この小舟を無断借用した、それをもちゃあんと先刻心得ている。なにもかも心得ていながら、黙っている、なんとなく解《げ》せない浪人だ、という感じを米友がようやく深くしました。
 さて、右の浪人は、一切をとり纏《まと》めて立ち上ったが、その立ち上って二三歩あるき出した形を見て米友が、思わずまた頭をひねったのは、実は今まで、この人が座を構えて、釣を試みている形ばっかりを見ていたのだが、こうして歩き出したところを見ると、どうも、別に、たしかにどこかで立ち姿を見た覚えがある。たしかに覚えがあるが、今それがちょっと思い出せねえ。
 米友としては、この変な人がどこへ帰るのだか、それは一向にわからないが、どのみち、あとへ戻れば湖の中へ入ってしまうのだから、畢竟
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