をするだけの度胸はない、万一、何か手でも出しゃがッたら、只は置かないよ、こういう時に、あの友兄いの奴でもいりゃ、思いきり眼にもの見せてやるんだが、なあに、あの辺のお安いところならば、このお角さんの一睨《ひとにら》みでたくさんだ――
 とお角さんは、充分にこいつらを見くびりながら、山王様の方へ進んで行きました。
 お角さんの見くびった通り、こいつらは、いやがらせ[#「いやがらせ」に傍点]以上のことを為し得る奴等ではないかも知れないが、そのいやがらせも、こっちの虫のいどころによっては、事が起らないとも限らない。
 こうして、お角さんは、送り狼だか送りよた[#「よた」に傍点]者だかわからない奴等に送られて、山王を目指して行きましたが、一行のうちの誰もが、お角さんのそんな腹の中には気がつかず、相変らず遊山気取りでブラリブラリと進んで行きました。
 ところが、まもなく、一行のすべてのこのいい気分が、ぶち壊されて、ふるいおののくような事件が出現したのは是非もないことです。それは、うしろから、例のよた者が、急にふるい立って殺到して来たわけではない。松並木になって、左右が畷《なわて》に続いている札場の
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