の学者でありましたが、とうとう鬼の出現説に降伏して、避難の宿りを求めることになったが、そこで、
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「足すすぎて、囲炉裏《ゐろり》によりて木賃の飯をたきたきも、又|彼《か》の鬼のこと尋ぬれば、老婆恐れおののきて、何事かかき付くるやうにいふ、辺土の女、其言葉ひとしほに聞取りがたくて何事をいふとも知れず……」
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土地が変り、音が変るから、老婆の恐れおののいて物語る節が、二人の旅行家には、どうしても聞き取れないけれども、この老婆が一つ家の鬼婆の変形《へんぎょう》ではなく、善良にして質朴なる土民の老婆であることは確実ですから、旅行家の方で念をおしてたずねてみました。
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「然《しか》らば、その鬼はいかなる形ぞ、額に角を立て、腰に虎の皮のふんどしせずやといへば……」
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百六十
そこで二人の学者は、まず鬼の風采、衣裳の特徴、角とふんどし[#「ふんどし」に傍点]のことから問いただしてみると、老婆に代って、その傍らの若い男が首を振って答えました、
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「左様なものにはあ
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