ぎつらんと覚えて、山の色もいとくらく、殊にきのふよりしめやかに雨降りて、日影もさだかには知れず、先の宿までは又三里もあれば、とても日の内にはいたりがたからんや、されど雨中なれば思ひの外に時刻うつらぬこともやあらんと疑ひて、行逢ひける老夫に、先の宿まで行くに日は暮るまじきやと問ふに、眉をひそめ、道をさへいそぎ玉はば行きつきもし玉はんなれど見れば遠国の人々にてぞ、此程は此あたりに鬼出でて人をとり食ふ、初めは夜ばかりなりしが、近き頃になりては、白昼に出て、此迄行かふ者は人馬の差別なく、くはれざるはなし、是迄の道も鬼の出でぬる処なるに食はれ玉はざりしは運強き人々也、是より先は殊さら鬼多し、旅するも命のありてこそ、何いそぎの用かは知らねども、日暮に及んで行き玉はんは危しと言ふ……」
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百五十九
当時、南渓子の同行に養軒子というのがありました。鬼が出ると聞くより、カラカラと打笑い、
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「いかに辺土に来ぬればとて、人を驚かすも程こそあれ、鬼の人を取り食ふなどは昔噺《むかしばなし》の草双紙などには有る事にて、三歳の小児も今の世には信
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