する自分の頭脳《あたま》の御粗末さ加減に呆《あき》れ返る。
ここが、安達ヶ原でも黒塚でもないという考えは、七兵衛もようやく自分の頭でわかりましたが、鬼のことがまだわからない。安達ヶ原や黒塚は、自分の頭だけの想像のあやまりだが、鬼が出た! ということは、たしかに、今そこで現実の人間たちの叫びであったのだ。現に、ここに集まっていた者がみな出動したのは、その鬼のためだ。安達と、黒塚と、一つ家は消滅したが、鬼の問題は解消しない。重ね重ね変な境に追い込まれたものだなんぞと考えているうちに、つい、うとうとと不覚の眠りに落ちかけようとする。いや、まだここで寝込んではならないぞと頑張る。
百五十六
安達ヶ原の黒塚の地位に就いて、青梅の七兵衛が錯覚を起したのを、そう強く責めてもかわいそうです。明治、大正、昭和の間にかけて、まだ解決しきれない学者の間の問題に「法隆寺再建非再建」の問題がありました。
聖徳太子の創建し給える大和の国の法隆寺は、日本文化の源泉地であり、世界最古の木造建築ということになっている。これが聖徳太子時代に創建せられて、そのままの保存であるか、その後、和銅に於
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