も脚絆《きゃはん》も取ってしまって、座敷へ上り、図々しくも敷きっぱなしの蒲団の中へ、身を丸くしてもぐり込んで、また頭から一枚|被《かぶ》ってしまいました。
鬼が出たという注進を聞いて、出動したこの家の人数はまだ戻って来ない。彼等は出動のことに急であったために、七兵衛の存在を顧みる暇がなかったのです。そんなら彼等が戻って来て、七兵衛の存在に気がついた時はどうする。
その時は、その時のこと――と度胸を据えた七兵衛は、そのまま蒲団の中へ温く身を丸め込んだのですが、単に温く丸め込んだというだけで、この場合、温い夢を結ぶわけにはゆかないのです。寝込んでしまうわけにはゆかないが、とにかく、こうして久しぶりに蒲団と名のつくものの中にくるまってみると、身心おのずから休養の気分になる。
いくぶん休養の気分が出て来てみると、七兵衛は、自分が今こうして、ここまで追い込まれて来たことの径路を考えさせられて、またも我ながらの苦笑を禁ずることができません。
本来、自分がこういう羽目になったことは、仙台の城下へ足を踏み入れて、青葉城の豪勢なのに見とれた時から始まるのだ。
なるほど、奥州仙台陸奥守六十二万石
前へ
次へ
全551ページ中421ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング