は、行住坐臥の間に、常にその小脇にかいこんでいる般若《はんにゃ》の面を、ちょっとゆすぶりました。
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わたしは
弁信さんに逢いたい
わが親愛なる
盲法師《めくらほうし》の
お喋《しゃべ》り坊主の
弁信よ
甲州の上野原で
別れてから
海山はるかに
行方がわからない
弁信さん
お前は今
どこにいるんだい
逢いたいなあ
弁信さん
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朗徹なる童声のうちに、ここで幾分かの感傷が加わりましたが、やがて、調子がうつって、在来の俗謡になりました。
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九つやあ
ここで逢わなきゃ
どこで逢う
極楽浄土のまんなかで……
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百四十
最初の、ジンド・バッド・セーラは単に音頭でありました。なかごろのは演説の変形した散文詩でありました。最後に至って、節調を全うした俗謡のうちの数え唄になったのです。
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九つやあ
ここで逢わなきゃ
どこで逢う
極楽浄土のまんなかで……
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これは、俗調ではあるけれども、音節が出来上っている。それを明朗にうたい出したのですが、そ
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