で毛唐をおもちゃにしていやがる、おれも、毛唐の女と遊んでみたいというのは無理かい。貴様ひとつ取持て――」
「えッ?」
「誰彼といおうより、築地の異人館のあの支配人てえやつの女房を、おれに取持て」
「えッ?」
百四
「えッ」と金公は、主膳の一文句ごとに仰山らしくクギリをつける。神尾は物凄い顔をしてつづける。
「日本へ来ている毛唐の奴は、見ゆる限りの日本の女を択り取りだ、こっちの人間は毛唐の女に対してそうはいかぬ、相手にしたくとも、こっちへ来ている毛唐の女の数は知れている、択り好みするわけにはいかねえのだから、見たとこ勝負だ、一昨日《おととい》異人館で見た、あの支配人のかかあ[#「かかあ」に傍点]というのがよろしい、いいも悪いもない、あれに決めた、貴様、あの毛唐の女房とひとつ、水入らずで一杯飲めるように取持ちをしろ」
「これは奇抜でげす、ズバ抜けた御註文でげす、さすがの鐚《びた》公、すっかり毒気を抜かれやしてげす」
「どうだ、いやとは言えまい、こっちからお為ごかしにお絹を連れ出して、異人館へハメ込んで置くのを大目に見てやっている以上は、あっちから相当の奴を、こっちへ廻
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