これから、お婆さんは徳大寺様と一緒に、甲府へ行くということになりました。
与八としては、この竜王村への用事を兼ねてなのですから、ではこれでお暇《いとま》をしましょう――ということになって、お婆さんは与八に厚く礼を言った上に、
「与八さん、ちょっとこちらへいらっしゃい、このお方は、徳大寺様と申し上げて、畏《かしこ》くも天子様の御親類に当る身分の高いお方でいらっしゃいます――お目通りをしてお置きなさい」
と言って、徳大寺様へ向いては、
「何と珍しい心がけの、人相のよい若衆《わかいしゅ》ではございませんか、鳩ヶ谷の三志様にそっくりだと、わたしは見ているのでございます、お見知り置き下さいませよ」
と言って、二人を引合わせました。
九十六
かくて、徳大寺様、おつきの侍と、お婆さんとは、ここを立って甲府の方へ向けて、田圃道の間を歩み去りました。
そのあとを見送りながら、焚火にあたって与八は、村人二人と話しています。村人二人から話しかけられて、与八がその相手になっているのであります。
「与八さん、どうしてあの女高山のお婆さんを知ってるでえ」
「わしゃ、前から知っているとい
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