《けしき》ばんで、
「では、抜いてお目にかけよう」
と言いました。
「どうぞ」
「しかし、抜くには抜くが、一度限りでござるぞよ」
と柳田が念を押しました。
「もちろん、一度限りでよろしい」
役人も頷《うなず》きました。
「身共は恐山の林崎明神のお堂でちっとばかり居合の稽古を致したにより、流儀によって抜いてごらんに入れようと存じ申す」
「それは一段のこと」
「流儀によって、一度だけは抜いてごらんに入れ申すが、二度は相成りませぬぞ」
「念を押すまでもないことじゃ」
「では、抜いてお目にかける」
柳田平治は、少し前の方へ進んで身構えをしました。
どうして、あの小男が、あの長剣を抜くか、長井兵助や、松井源水を見つけないこの地方の人々には、少なからぬ驚異でありましたが、田山白雲もまた固唾《かたず》を呑み、思いがけない見物をすると共に、この小男のかなり強情なのに呆《あき》れました。
八
刀の中身を見たいと言うので、刀の抜きっぷりを見せてくれと言ったわけではないから、こう物々しく前へ出て身構えをし直さなくともよかりそうなものだと思われないこともない。素直に、「いざ、存分
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