、というのが有力なる証拠の一つということです。ですから、嫌疑のあると無いとに拘らず、一応は礼を以て、刀の中身を見せてもらうということが役目の手前ということになっているし、要求された方も、身に後暗いものが無い限り、快くその要求に応じてくれるのが例となっている。それを同様に、ここで繰返して要求するまでだということです。
 右のように説明されてみると、あながち役人が権柄《けんぺい》のためや、物好きに抜かせてみようというわけではなく、当然のお役目のために要求するのだ。そこで、この一人の川破りのために、物々しく貝を吹き鳴らしたのも、必ずしも川破りを咎《とが》めようとするのが目的でなく、ちょうど来合わせていた右の目附の一行が、それ! と見て、怪しいと心得て警戒を命じ、自分たちはあとからおっとり刀で早舟を飛ばせたという段取りになっていることがわかりました。
 立聞きをしていた田山白雲も、これはまず役向の要求として無難なことであるとは思いました。
 その理由を、むずかしい面《かお》をして聴いていた川破りの小男――もうすでに本名が柳田平治とわかっているから、その名を用いることにする――柳田平治が少し気色
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