よ――」
「高山じゃ、つまらない、欲しくったって、二度とあすこへ行けますか」
「ところが、ここで気を抜いたら、わっしが、ちょっと行って受取って参りますから、御安心ください」
「ちょっと行くったって、お前、ここはもう近江の国じゃないか、これから美濃の国を通り過して、それからまた飛騨の高山まで、ちょっくらちょっとの道のりじゃありませんよ。それにお前さん、それを取りにでも行こうものなら、待ってましたと、隠密《おんみつ》の手で引上げられてしまうにきまっていますよ。飛んで火に入る夏の虫とは本当にこのこと、三百両は惜しいけれども、銭金のことは、またどこでどうして稼《かせ》ぎ出せないとも限らない、命は二つとありませんからね、せっかくだが、あきらめちまいましょうよ」
「ところがねえ、お蘭さん、その辺に抜かりのあるがんりき[#「がんりき」に傍点]じゃあございません、その預け先というのが、決して、どう間違っても、ばれ[#「ばれ」に傍点]たり、足のついたりする相手じゃあねえのですから、豪気なものです。それに、憚りながら、この兄さんは足が少々達者でしてね、飛騨の高山であろうと、越中の富山であろうと、ほんの少々
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