まかしの芸当なんぞは、お手のものと思召《おぼしめ》せ」
「何を言ってるんだか、よく、わからないが、ではお前さんが、その時にあれをちょろまかして持出しでもしたの、持出したとすれば、ここまで持って来て下すったの? まあ有難い、ほんとうに色男の御親切が今度ばかりは身に沁《し》みてよ。そんならそうと、早くおっしゃって下さればいいに、焦《じら》さないで早くそれをここへ出して頂戴な」
「ところがだね、そこは憚りながらがんりき[#「がんりき」に傍点]の知恵で、抜かりなく、あのお手元金三百両を持出したことは確かに持出したんだが――ここまで持来《もちこ》して、お前さんを喜ばせる運びまで行き兼ねたのが残念千万なんだ」
「なあんだ、途中で落しでもしたのかい、そのくらいなら、そんなお話を聞かせてくれない方がかえってよかった」
「ところがね、まだあきらめるには早いんでしてね、あの場合、大金を持って逃げちゃあ危ねえと思うから、ちょっと預けて出たんだ、ちょっと知合いへね」
「その預け先はわかっているの」
「それはわかっているさ、行けば、いつでも、ちゃあんと渡してくれることになっている」
「どこなの――」
「高山の町
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