して、心のうちでは、こっちの親切がちゃんとわかっていただいてるんだから、悪くねえのさ。ところで、このケチな野郎がどのくらいお前さんに実意を持っていたかという証拠を、もう一つここで生《しょう》のままごらんに入れる段取りになるべきなんだが、風をくらって、つい、そいつを一つ取落したのが不覚の至り。というのはお蘭さん、お前さんも迂闊《うかつ》ですねえ、これほどの御念の入った道行をなさろうてえのに、命から二番目の路用を忘れておいでなさるなんぞは取らねえ。お手元金をね、ふだんあれほど御用心なすって、枕もとのお手文庫へ、いざという時お手がかかるように備え置きの金子《きんす》ざっと三百両、あれをいったいどうなすったんですね」
「それなんですよ、それを今、歯噛みをしながら口惜《くや》しがってるんですが、もう追っつかない、当座のお小遣だけは何とか工面して来たけれども、これから先を考えると心配でたまらないのよ」
「そこでだ、そういうことには憚《はばか》りながら、色と慾との両てんびん[#「てんびん」に傍点]をかけて抜かりのねえがんりき[#「がんりき」に傍点]の百なんですから、あのきわどい場合に、ちょっとちょろ
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