ぞやの晩でげした、新お代官の奴は新お代官で、どこからか手入らずの新しいのをつれ込んで、たんまりはんべらせようとなさるし、お前さんはお前さんで、前髪立ちの若い男かなにかに持ちかけるというのを、見たり聞かされたりした、こっちもだま[#「だま」に傍点]っちゃいられませんね、名代《なだい》の新お代官のしろもの、お蘭さんてえこってり者に一目お目にかかって置きてえ、それ、あの晩忍び込んだはいいが、いやはや、飛んでもない戸惑い、人違え、当ての外れた相手がそれに思いの外の腕利きで、すんでのことに危ねえところ――それほどまでに思いこんだ、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百てえ野郎が、わっちなんでげす。心意気を聞いてみりゃあ、なおさら憎くもござんすめえ」
とがんりき[#「がんりき」に傍点]に脂下《やにさが》られ、お蘭どの、眼尻が上ったり下ったりして、
「あの時の悪者はお前さんだったのかえ――それとは知らなかったよ」
「悪者じゃございませんよ、この通り、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百といって、ちっとは鳴らしたいい男の兄さんでげすよ」
「いやな奴」
「いやな奴で、大きにお気の毒さま。でもまあ、口でけな
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