かない野郎でありました。
しかし、こうなっては、お蘭どのももう遅いのです。いけ好いても、いけ好かなくても、こいつに見込まれた以上は、女に下地がある限り、のがれっこはなし――一時は野暮《やぼ》に叫びを立てようとしたが、どっこい、その口を塞がれてしまってみると、有無《うむ》を言わされようはずはないのに、お蘭どのという女が、本来あんまり有無を言わない女なんだから、口をこじあけて、大福餅を抛《ほう》りこんで無理矢理に食べさせられてしまってみると、今度は、もう一つ食いたいと口をあく奴なんだから、事がそこに及んだ後はたあいないものです。
「どうです、お蘭さん、男はケチな野郎でも、こうなってみると、まんざら憎くもござんすめえ。ことにお蘭さん、お前さんを見そめたのも、昨日や今日のことじゃありませんぜ、飛騨の高山では、命を的に大奥まで乗込みの、あぶない綱渡りも致しましたのを、よもお忘れじゃあござんすめえ」
がんりき[#「がんりき」に傍点]の百からこう脂下《やにさが》られて、お蘭どのが今更のように、
「おや、お前さんという人は、高山のことまで知っているの?」
「知らなくってどうなるもんですか。あのいつ
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