大菩薩峠
新月の巻
中里介山
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)奔馬《ほんば》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天馬|空《くう》を往く
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)鉄門※[#「金+俊のつくり」、306−14]
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一
とめどもなく走る馬のあとを追うて、宇治山田の米友は、野と、山と、村と、森と、田の中を、かなり向う見ずに走りました。
しかし、相手は何をいうにも馬のことです。さしもの米友も、追いあぐねるのが当然でしたが、そうかといって、そのまま引返す米友ではありません。ことに右の放たれたる馬には、長浜で買入れた家財雑具はいうに足らないとしても、たったいま両替したばっかりの何千というお金が、確実に背負わせられている。金額の多少を論ずるわけではないが、ことにあのお嬢様が、この米友を見込んで用心棒を依頼してある、その責任感から言っても、追及するところまでは追及せずにはおられないでしょう。
それはそうとして、
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