受け致しました。では、御無事に行っていらっしゃいまし」
与八も、こう答えるよりほかには、頓《とみ》に返答のしようがなかったのです。自分が引留める権能もなし、引留めたからとて引留められるはずもなし、女子供とかいう人ならば、一応忠告も試みようというものだが、堂々たる大家の主人の行動に、自分なんぞが口出しをすべき抜かりのあるはずはないのだから、やはり、言われた通りに従順に受け、頼まれた通りに頼まれるのが一番だと、与八の頭にうつりました。それに、突然とは言いながら、持余し者ではあるが一粒種のお嬢様というものが、あちらへ出かけていらっしゃるのだから、親としてそれをみとりがてら、旅をなさろうというのは、お奨《すす》め申せばとて拒《こば》む理由はない、と信じたからであります。
与八の快き承諾ぶりで、伊太夫は最も安心して本家へ引きとると共に、内密に、迅速に、旅の用意をととのえてしまいました。今の伊太夫の家では、この旅を、無用なり、危険なりとして諫諍《かんそう》するほどのものはありません。よし、あったとしたところで、与八と同様の考えで、むしろお奨め申せばとて拒む理由はないのですから、ただこの上は、主
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