費用を送ってもらいたい、それも少々ずつでは、おたがいにめんどうだから、この際、わけていただいてあるお嬢様の分の財産をそっくりもらいたい、不動産の方は追って金に換えて欲しいが、貯えてある金銀だけは一文も残さずに、そっくり近江の胆吹山の麓のこれこれへ送り届けてくれと、こうおっしゃってなのでございます」
「ナニ、あれの分の財産を、そっくり残さず送れと――うむ……」
伊太夫も、さすがに腹へ深く息を飲みこんでしまいました。
七十八
なるほどこれは、番頭一人の頭で取計らいきれぬというのも無理がないと思ったのでしょう。
正式に勘当したというわけではないが、かりそめにも、親でない、子と思うな、と言い合って別れてから、父子の間には、わたることのできないほどの溝が掘られてあるのでありました。
そうして、決定した伊太夫は、それでもこの我儘娘《わがままむすめ》の将来のためにとて、財産のうちを分割して、あれの物として頒《わか》ち置いて、その保管を番頭に托し、必要ある毎には、大体に於てあれの申し出通り送ってやれ、ことに旅などへ出ては、入費に糸目をつけないでよろしい、といったような暗示
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